幽霊の生甲斐?


『おう〜〜!出た出た 嬉しいねぇ〜〜 待ってたんだよ♪ マッそんなに離れてちゃ顔も見えないもっとこっち寄ってゆっくり顔みしてくんねぇ〜』
さぁ 困りましたのはこの女性の幽霊
『うらめしや〜・・・・うらめしや〜・・あの〜〜恨めしいんですけど?・・あのね一寸は怖がってくれないと』
なんて怖がりを催促しちゃってます
『あはは そうかいそうかい あ〜〜びっくりした〜〜♪おぉ〜こわいこわい!どうでぇこんな所でいいかい?』
『うらめ・・・ちょいとあなた あなた幽霊馬鹿にしてない?』
『そんな訳でもねぇけどよ でえいちおめぇとは今日始めてのご対面だろ おめえに恨み受ける覚えもねぇしなぁ』
『あっ あなたそう言う言い方する訳 言っときますけどね そりゃあなたにはお会いするの初めてですよ
でもね 幽霊ってのは世間一般の人にも恐ろしいぃ〜〜って気持ち持ってもらうものなのよ 
それを怖い振りされたり待ってましたなんて言われると私の立場ってものがメチャメチャになってしまうと考えなかった?』


『おう 其れも道理だ 悪かったよ じゃもう一度始めからやってくんねぇ 今度は真面目に怖がるからさぁ』
『もう〜〜 白けるわねぇ〜〜でも折角だしもう一度行くわよ〜〜・・・・・・うらめしい〜〜』
『ワッワッワッ わ〜〜びっくりした 恐ろしい〜〜うん恐ろしい〜〜いや〜〜全く恐ろしい!』
『どこがよ〜〜 そんなニコニコした顔してて恐ろしいもあったもんじゃないでしょ アホラシ もう止め』
『あはっ そうかい 悪い悪い なんせこちとらおめえ出るのを首長くして待ってたもんだからよ』
『フン馬鹿馬鹿しい みせもんじゃ無いんだからね 幽霊ってのは』


『ちげぇねぇ まっ機嫌直してこっち来ねぇ 行ける口だろ いっぺぇお近づきの印にやってくんねぇ』
『あぁああ 力落としちゃった 気がくさくさするよ』 
『アハハ まっ お詫びの印に はいよ グット空けてグット〜』
『クイ〜クイクイ・・・ふ〜〜』
『おうおう 行ける口ジャン 呑みっぷり見事!ささ もう一杯』
『何よ 今日ほど幽霊して自尊心傷つけられたこと無いわよ ほんとに〜〜★』
『いやぁ〜何せ初めて幽霊にお目に懸かったもんだからもうすっかり興奮しちゃって 悪かったよ』
『まぁ それほど恐縮されちゃうと怒るに怒れないけど あんたって少し変わってるわねぇ〜』
『アハハ そうかい?それにしても何であんな怖い顔して恨めしい〜〜なんて言って出て来るんだい?わっちはおめぇに恨まれる筋ねぇぜ』
『もう判っちゃ居ないわねぇ 恨めしいってのはね 幽霊の挨拶 今晩はって事なのよ にこやかな顔で出て来ると売れない噺家みたいでしょ』
『ちげえねぇ 折角出てくれたのに 笑われたんじゃ精が無いな』
『そうよ 幽霊ってのは人怖がらして其れを生甲斐にしてんですからね』


『生甲斐ねぇ?おめえさん死んでんだろ それでも生甲斐って?何か理屈にあわねぇな』
『フンッ!お前さん幽霊が一体どんなものか何も判っちゃ居ないね 幽霊ってのはね何故存在するか?して其の存在価値は?
是をじっくりと教えてあげなくちゃいけないね』
『おうそうかいそうかい 其れは有がてぇ 楽しみに待ってるぜ ささ もう一杯行きねぇ』
『フン 飲ませ上手だねぇ 相当女泣かせたね』
『アハハ 冗談じゃねぇ おういい飲みっぷりだ 惚れ惚れするぜ』
『あぁ すっかり良い気持ち 今夜はご挨拶って事で是で返るけど 明日から幽霊学みっちりと』
『そうかい マッ無理強いも野暮ってもんだ おっと おめえの其の顔の腫れ具合相当ひでぇな 一寸待ちな
これは 今普請してる長崎屋さんから貰った異国の薬でメンソレと言う顔の出来物にはていそう効くそうだ 付けて見ねぇ
こっちは シャボンと言ってな髪や顔や体洗う時使うと綺麗になるそうだ 挨拶代わりだ 持ってけ!』
『えっ 是を私に そうかい有難うね 嬉しい事して呉れる粋な男だねぇ こんな怖い顔の私に・・・』
名残惜しむかのように其の幽霊スーッと消えていったのです
そして次の夜・・・♪